2021-06-01から1ヶ月間の記事一覧
妻の出産予定日が近づいてきたある日、家に帰ると、妻のお腹が萎んでいた。「あれ、お前、え、それ、子どもは……」「ああ、今日打ち合わせでいないの」
趣味は全国の図書館を巡って、シンデレラのガラスの靴を割ることです。
教室が人間臭くなるから、早く飼育小屋に戻してきなさい。
「あいどるのゆび」と書かれたクレーンゲームの筐体の中に、ゴム製の小指が一本だけ残っている。
「おはよう」おはよう。「あっ」何?「夢の欠片がついてる」彼女は寝癖だらけのぼくの髪から、白い雲のようなものをつまんで食べた。「甘いね。どんな夢見てたの」君の夢かな。「あっそ」
昔ながらの手首屋さんだから、買うと新聞紙に包んでくれる。ちょっとはみ出た指先が可愛い。
人間関係で悩んでいたという、自殺した友人の遺書には、ただおっぱいの絵が。
ぼーっとしてたら神様がログインする音が聞こえたので、慌てて祈りの姿勢になる。
私しか保管場所を知らないはずの私の日記帳を開いたら、私の好きな男子の名前がすべて消されて親戚の叔父さんの名前に書き換えられていた。
星は出ているのに月が見えない夜、足下をよく見ると、大量の画鋲が落ちている。
ほら、ピアノのドの鍵盤鳴らすと、ほら、夜空のあの星が光るだろ。ミの鍵盤だとあの星。ファはあの星。何か一曲演ってみな、キラキラして綺麗だから。な、お父さんが金持ちで良かっただろ?
寝たきりのおじいちゃんのおむつを取り替える時、今日はおじいちゃんのお尻の穴から念仏が聞こえてくることに気づく。
彼の母親から教えられた暗証番号を入力すると、彼は静かに勃起しはじめた。
オカルト雑誌を読んでいたら、「新・自殺の名所」というページに、近所の喫茶店のマスターが、何かの小瓶を持って微笑んでいる写真が載っている。
コンビニで買った餅菓子の中に動物の毛のようなものが入っていたので、クレームを入れようとパッケージを見ると、「製造所」の欄に「月」と書かれている。
最近家の時計の長針の様子がおかしいので、行動を注意していたら、他の時計の短針とラブホテルへ入っていくのを見た。そのことを短針に告げると、短針は乱心したようにくるくると回り出し、やがて「4」でぴたりと止まって、そのまま動かなくなった。心配であ…
祖父の遺品の中にレコードがたくさんあった。ラベルには「イヌ(溺)」「ネコ(溺)」「サル(溺)」「クマ(溺)」「ヒト(溺)」「ヒト(吊)」「ヒト(潰)」「ヒト(刺)」……。
仏壇に納めた祖父の脳が、膨らんだり萎んだりを繰り返している。ひ孫が来ているので、一句ひねっているのだろう。
お父さんの実家に帰省した時、今年は一番下の妹に、おじいちゃんとおばあちゃんのリモコンが渡された。そろそろ動かし方覚えないとね。お年玉ももらえないし。
このように、美しいものを見せた目玉は、水に浮くんですねぇ。
「香水、変えたね」美術館の清掃員が、一枚の裸婦画にそう話しかける。彼の目をみると、黒目がない。
彼と出会ったきっかけは、ラブレターを書く機械が故障して修理を頼んだことだったんです。
真夜中のリビング。遺言状を読んだ若妻が、義父の骨壺の中身を床にぶちまけ、真っ赤なペディキュアを塗った素足でパリパリとそれを踏み砕き始める。
ご希望のボタンを押されて生まれて、ご希望のボタンを押されて死ぬ。
満員電車に揺られている時、ふと隣の死者専用車両を覗くと、麦わら帽子をかぶった女の子が一人ぽつんと座っていて、やがて海の近い駅で降りていった。
おじいちゃんの遺影で福笑いをしている最中、偶然笑っているように見える顔が出来たのを見て、母がふと「こんな風に笑うことができる人だったら、おじいちゃんの人生も変わっていたかもね」とつぶやき、場の空気が重くなる。
校内での自殺を禁ずる。(私の通う学校の生徒手帳より)
「最強」のボタンが点灯するマッサージチェアの上で、父の色をしたゲル状の何かが、ぶるぶるぶるぶる震えている。
夫と近所を散歩中、夫が一軒の家を見て、「ここ、今夜、火事になるよぉ」と言った。夫の腕には鳥肌がびっしり立っていた。「消防車呼ぶの久しぶりだなぁ」夫はスマホを取り出し、夜中の時間にアラームをセットした。「そんな目で見ないでよぉ」夫は笑ってい…
⑤心を温めます(厳しくされたい方はこの工程を省いてください)。