超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

2021-01-01から1ヶ月間の記事一覧

Q

食Q植物を育てているので、鉢植えの前でなぞなぞを読み上げるのが日課だ。

Q

父はクイズ葬で賑やかに弔われたが、優勝したのが父の昔の愛人だったということが、ぼくらをもやもやさせた。

十三

「十三歳の誕生日おめでとう。プレゼントだよ」今年も叔父さんはあの女の人を連れてきた。「今年は十三秒言うこときくよ」

ビル

古いビルだが、影が仏様の形をしているので取り壊せない。

大福

一語大福をかじったら、中から「羊」が出てきたので、今日は牧場までドライブ。昨日は「愛」でちょっと重すぎた。

換気扇

くそっ、ここで言い争っている間にも、妻の浮気相手は台所の換気扇から少しずつ逃げていっているだろう。

夏の公園、蝉の声にじっと聞き入ってたおじさんが突然、「そんなのは言い訳だ!」と叫んだ瞬間、しゅんとしたように蝉の声がぱたりと止んだ。

貝殻

砂浜を散歩中、何気なく拾って耳に当てた貝殻から、「ハズレ」と女の声がして、あとはどの貝殻を拾っても、聞こえるのは「また挑戦してね」の機械声ばかり。

焦げる

髪の毛の焦げる臭いがしてきて初めて、これはただの頭痛じゃないと気づく。

味比べ

ささ、そこの奥さん、どうですか、涙の味比べ。珍しいでしょ、ね。ささ、どうぞ。この日のために何人か亡くなってることですし、せっかくだから、ね。

工場

天使の工場では、年に一度、煙突の内側に溜まった羽毛を取り除く掃除が行われます。

流れ星

「流れ星が見てみたい」とお母さんに言ったら、お母さんは「任せて」と、掃除機を抱えてベランダに出ていった。

初めて訪れた動物園を回っていると、何かの檻の前に「××ちゃんは亡くなりました」との立て札があり、覗いてみると、何もいない檻の中に、バナナとグランドピアノがぽつんと置かれている。

秘策

母のアドバイスに従って、米を炊く時炊飯器の中に髪の毛を一本混ぜるようになってから、夫の浮気がぴたりと止んだ。

幼い息子は遊んだおもちゃやフィギュアを元の箱に戻さず、色んな所に隠すというおかしな癖があるため、食器棚や冷蔵庫、母の死体の口の中など、思いがけない場所からおもちゃが出てきていつもびっくりする。

サービス

山へ向かう途中で寄ったガソリンスタンドで、トランクの中の死体のお化粧が崩れていますよお直ししましょうかと尋ねられたが、持ち合わせがないので断った。

夜中

夜中、一人暮らしをしている叔母から「たすけて」とメールが届いたので、心配になって自宅を訪ねてみると、叔母の家にあるすべてのぬいぐるみや人形がなぜか台所に集まっており、叔母の姿はどこにもない。

隣家

ずっと空き家だった隣家にある日「おばけ」という表札がかけられていて、いつまで経っても誰も挨拶に来ない。

このままだと

「お前な、このままだと、こうだぞ」そう言って先生は、人間の形に切った紙片を、頭からシュレッダーに突っ込んだ。

お手

飼い犬が仏壇の前で、「お手」の仕草を繰り返している。ああ、今日は来てるんだ。ちゃんとお化粧しないと夢で叱られるな。

トマトジュース

小学生の娘が読んでいたおまじないの本をめくると、やたら「トマトジュース」を用意させるおまじないがあって、たぶん「血」の代用品なんだろうな、と思う。

とられた

仏間の日本人形の頭が少し膨らんで見える日は必ず、寝たきりのおばあちゃんが「とられた、とられた」とうわごとを繰り返している。

お供え

毎年決まった日に、ほ乳瓶、玩具、ランドセル、電気剃刀、ネクタイ、名刺入れ、と供えられていた墓の前に、今年は首吊り縄が供えられていた。

遊園地

私の町にある遊園地では、近くで大きな火事があると、大観覧車が無料で開放される。

寝言

私の夫は、寝言で「いってきます」と言った次の日から私の体に一切触れなくなり、寝言で「ただいま」と言った次の日に必ず私を抱く。

太字

おじいちゃんが学生の時の教科書は「地球滅亡」は太字だったけどなぁ、今はそうじゃないんだねぇ。

仮面

昔は、政府から支給される仮面は一種類だけでしたから、つらくても悲しくても笑っていることしかできなかったんですよ。

生徒の名前が書かれた袋に入っている粉を、担任教師が必死にお湯で溶いてそれぞれの型に流し込んでいる、入学式前日。

おなかいっぱい

今はおなかいっぱいですので、標高が少し高くなっていますね。

故障

これは故障じゃありません。死者向けのCMが流れているだけです。