超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

2019-02-01から1ヶ月間の記事一覧

霧雨

近所のコンビニの傘立てにずーっと置きっぱなしにされていた青と赤の二本の傘、の間に、今日、ちっちゃな傘が横たわっていた、子傘が生まれてしまったらしい、買い物ついでに、レジ打ちをしていた店長に話を聞くと、「いやあ、もう、しょうがないからうちで…

死んだ娘の夢を見た朝はいつも、目から頬へ、涙の筋が、四本、残っている、娘も、泣いてくれているのだ、私とともに、私の夢の中で、私の中で、それが、心を、とてもあたたかく、そして、さびしくさせる、顔を洗う、歯を磨く、線香をあげ、ふいに、また、涙…

洋梨

今夜の満月はなんだかプルプルしていておいしそうだ、と思った矢先、大きなスプーンが現れて、満月の端っこをちょっとすくって消えていった、ああ、そういえば、今夜から月の満ち欠けのやり方が変わります、ってテレビのニュースでやってたっけ、スプーンで…

目医者の奥さん

目医者の奥さん、自転車のカゴに、畑で採れた目玉をたくさん詰めて、爽やかに走っていく、こんにちはあ、と声をかけると、目医者の奥さん、わざわざ自転車をとめて、いい天気ですねえ、と満面の笑みで、その笑みにどこかいつもと違うものを感じたので、何か…

ある日の真夜中、「細部まで精巧に再現しました」と博物館が胸を張る城下町のジオラマの周りを、殿様の幽霊がぐるぐる歩き回っているのを見た、唇をとがらせて、城の窓の数を数えていた、ああ、いいなあ、これぞ監視カメラ冥利に尽きる光景だ。

テイクフリー

「あらら、雪だるまの顔だけ先に溶けちゃったんだね」「ううん、さっき、首のないお姉さんが来て、持っていっちゃったの」