超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

2017-04-01から1ヶ月間の記事一覧

影と休日

人込みの中を一日歩いて帰ってきたら、影に細かい傷がたくさんついていた。 休日の街を、みんな笑いながら、手をつないだりして、楽しそうに歩いていたのに、本当はどんな気持ちで歩いていたのだろう。

イミテーションゴールド

脚の間から浮気相手がひょいと顔を覗かせ、「ここに蝶のりんぷんがついてますよ」と言った。 夜の間に家の誰かが標本のピンを抜いたのだろう。「舐めたら風邪ひくわよ」と答えると、浮気相手がおじいさんみたいな声で笑った。

星と塩素(改訂)

生徒が帰った後の夜のプールを片づけていたら、突然水面に何かがバシャンと落ちてきた。 おそるおそる近づいてみると、何だか丸くて、柔らかく光っている。 根拠はないが危ないものという感じはしなかった。拾い上げてみるとほんのり温かかった。 一体これは…