超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

2016-04-01から1ヶ月間の記事一覧

酔いと呪い

そいつが死んだ時、一番の下っ端だった俺の耳の穴の中に、そいつの死体を埋めることになった。 アル中だったそいつは、死体になっても酒瓶を握りしめて離さなかったので、仕方なくそのまま埋めたのだが、それ以来寝返りをうつたびに、瓶に残った酒が俺の頭の…

Here Comes The Sun

金具を回す乾いた音が空に響いている。 私が金具から手を離すと、空の雲がゆっくりと動き出す。 去っていく雲を目で追っているうちに、私のまぶたは重くなり、眠気が全身に忍び寄ってくる。 金具を回す乾いた音が遠くで響いている。 金具を回す乾いた音がや…

穴と秘密(fixing a hole)

もしもお薬で治らなかったら、この穴は、お人形の隠れ家にするの。

砂と尾

夕方の動物園で、機械仕掛けの象が、水のみ場の傍に座り込んでいる。 どこからか飛んできた雀が、水のみ場の水を飲んでいる。 機械仕掛けの象は水を飲まない。喉から全身が錆びていってしまうから、水は飲むなと飼育員に厳しく言われているからだ。 機械仕掛…

ホテル

薄着をした女が、ホテルの廊下を歩いている。 女は一つのドアを開ける。 薄暗い照明の下のベッドに、人のかたちをした石が腰かけている。 女は石を抱きしめる。 石が崩れて隙間から枯れた花が顔を覗かせる。 女は丁寧に花を抜き取り、枕の上に横たえる。 女…