超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

2016-03-01から1ヶ月間の記事一覧

雲と飛行機

腐った雲が夏空を流れていく。 石鹸のマークがついた飛行機が、それを追いかけていく。 団地のお母さんたちが一斉にベランダに出てきて、慌てて洗濯物を取り込む。 腐った雲は夏空をどこまでも流れていく。

星と蛇口

宇宙服を着たツアーガイドの女が、目の前を漂うビーチボールくらいの惑星を掴み、蛇口を取り付ける。 宇宙服を着た私たちが、コップをあてがい、栓をひねると、綺麗な青の液体が注がれる。 星の生き物たちが干からびて死んでいくのを眺めながら、ちびちびと…

流し台と人魚

台所にゴキブリが出たのでそれのための罠を組み立てていると、流し台の方から何やらゴボゴボと音がしたので、そっちに目をやると、水を溜めた洗い桶の縁に小さな人魚が腰かけていた。人魚はゴキブリの罠を組み立てる私を見てくすくす笑ったかと思うと、高い…

早朝、寝室の窓をコツコツと叩く音で目が覚めた。 カーテンを開けると、塩の小瓶がふわふわと浮かびながら窓を叩いていた。 しばらくじっと見つめていたら、塩の小瓶はふいに回れ右をし、庭先で遊ぶ雀たちに塩をふりかけたりして、ちょっかいを出し始めたの…