超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

2016-02-01から1ヶ月間の記事一覧

歯型

朝起きると二の腕に歯型がついていた。 寝ている間に自分で噛んでしまったらしい。 何だかよくわからないが、とりあえずいつものように洗面台の前に立ち、顔を洗っていると、頭の上から「痛いから噛まないでください」という声が聞こえてきた。 恐る恐る顔を…

雨と新品

突然降り出した雨の中、家路を駆けていく。 雨漏りの音が頭の中に響いてうるさい。 昨日市場で安く買った頭だから、どこかうまく繋がっていないのかもしれない。 前まで使っていた頭は上司の子どもに譲ってしまった。 昔誕生日に親が買ってくれた良い頭だっ…

氷を踏んで足を切った。 三日前まで飼い猫だった氷の塊の表面を生ぬるい血が流れていく。 今朝は少し眠りすぎた。 今日の層に、もううっすらと霜が降りている。

こたつと蜜柑

冬。 少女がこたつで蜜柑を剥いている。 彼女の傍らでは老猫が丸まっている。 テレビもラジオも沈黙し、部屋はひっそりと静まり返っている。 * 少女が蜜柑の一房を口に入れようとした時、老猫がふっと目覚め顔を上げる。 少女は老猫に目をやる。 老猫は立ち…