超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

2016-01-01から1ヶ月間の記事一覧

月と娘

満月の夜、居間の窓から外を眺めていた娘が、何を思ったか突然ベランダに出た。慌てて追いかけて「どうしたの?」と聞くと、「ゴミ」と言いながら月を指さす。 「ゴミ?」と聞き返すと、娘が月に向かってふっと息を吹いた。すると私が今まで月の模様だと思っ…

貝と砂浜

晩飯の時間になっても妹が部屋から出てこないので、妹の部屋のドアを開けると、波の音がして、寒々しい蛍光灯の光の下に、暗い海が広がっていた。 冷たい砂浜の上には、二枚貝がいくつか転がっていて、拾って台所でこじ開けると、中には妹がよく弾いていた電…

しおりちゃん

カビが生えてしまったので、綺麗に洗って、薄く切って乾燥させて、本の栞にした。 文庫本は常に持ち歩いているので、これならいつも一緒にいるみたいで嬉しい。

桃の水

友人の家に遊びに行くと、友人のお母さんが、昔よく出してくれていた桃の香りのする水のことを思い出します。 友人のお母さんは桃の香りの息を吐き出す唇を持っていて、それを水に沈めて桃の水を作っていました。 水を入れたプラスチックのポットの中で桃の…