超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

2015-01-01から1ヶ月間の記事一覧

肉と鍵

窓を開けてうとうとしていたら、黒くて小さな何かが飛んで来て腕にとまった。どうせ蚊だろうと思いそっと目を開けると、見たこともない妙な虫が、私の腕の上をうろうろ歩き回っていた。すぐに叩き潰してもよかったのだが、わざわざ体を動かすのも面倒だった…

亀のかたちをした灰の塊を、痩せた痩せた子どもたちが、取り囲んでいた。 私が助ける間もなく、亀のかたちをした灰の塊は、痩せた子どもの、痩せた指につつかれて、崩れ落ちてしまった。 私は重たい影を引きずりながら、歩きつづけ、やがて岬にこしかけ、何…

波打つ

晩飯のあとにラジオを聴きながらコーヒーを飲んでいたら、とつぜん目の奥がじりじりと痛くなってきた。 しばらく目を閉じてじっとしていたが、痛みは一向に引かない。仕方がないので、効くかどうかは知らないが、ひとまず頭痛用の薬を飲んでおくことにした。…

舌と蜂蜜

妹の唇をこじ開ける。 中を覗く。 舌のない妹の口の中を、妹の舌の幽霊がうろうろしているのが見える。 私は蜂蜜の瓶の蓋を開ける。 スプーンを取り出す。 蜂蜜をすくう。一さじ。一さじで充分だからだ。 私は舌のない妹の口の中に、蜂蜜を流し込む。 妹の舌…