超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

 夜、庭に出て涼んでいると、お隣の庭にある犬小屋の中に、小さな赤い光が見えた。よく目をこらすと、犬小屋の中にお隣のご主人がいて、四つん這いで煙草を吸っていた。何事かと思いじっと見ていると、やがて私に気づいたご主人は照れくさそうに笑い、「いやあ、今日は私が犬になる日なので」と言った。「はあ、そうですか」適当に返事をしてそそくさと家に戻る。カーテンを閉める時再び犬小屋を見ると、お隣のご主人はうまそうに煙草を吹かしていた。隣家のルールは知らないが、犬になるなら煙草は吸っちゃだめなんじゃないかな、と思った。