超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

威厳

 とある動物園の近くにあるコンビニに立ち寄ったところ、レジスターのひきだしにライオンのたてがみがぎゅうぎゅうに詰め込まれているのを見かけた。「何?」店員に訊くと、「アイス一本分足りなかったんですよ」という答えが返ってきた。早速動物園に行き、ライオンの檻を見に行ってみると、たてがみのないライオンの中に、しきりに自分の手をぺろぺろぺろぺろ、名残惜しげに舐めている一頭を見つけた。たぶんあいつだ。こう暑くちゃあなあ、オスの威厳よりアイスだよねえ。