超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

出世

 何時間寝たかわからない。ふと目が覚める。部屋で寝ていたはずなのに、目の前には青空が広がっている。どうしたことだ。寝返りを打とうとするが、金縛りに遭ったように体が動かない。どうしたことだ。どうにかこうにか右腕をぐっと上げると、メキメキ、という感覚とともに、鳥たちが一斉に羽ばたく音が聞こえてきた。鳥?目だけ動かして自分の体を見やる。寝間着を着ていたはずだが、体全体が鬱蒼とした木々に覆われていた。ははあ、どうやら、寝ている間に俺は山になってしまったらしい。そうとわかれば話は早い。迷惑をかけないように眠り続けよう。昨日まで無職だったのが今日から山か。大出世だな。