超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

ぼこぼこ

 夕暮れ時。一人、部屋でぼんやりと壁を眺めている。壁に伸びる俺の影。夕日を浴びて無駄に長く伸びている俺の影。にゆっくり手を伸ばし、少しずつちぎっては、口に放り込み、それを酒であおる。影をちぎっては酒を呑み、ちぎっては酒を呑む。夕暮れ時という一日で一番濃い時間に対して、他にできることが何もないのだ。影をちぎっては酒を呑む。噛んでも噛んでも味がしないのは、俺がダメな人間だからか。ちぎっては呑み、ちぎっては呑み。やがてぼこぼこになった影を癒すように、夜の闇がゆっくりと部屋を満たしていく。ぬるい畳に寝転がり、明日なんか来なければいいのにと心から願う。