超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

目の上

 行き先のところに「目の上」と表示されたバスが向こうからやってきた。この辺りに「目の上」なんて地名があったっけ。不思議に思いつつバスの中を見てみると、座席にはありとあらゆる眉毛が乗っていた。細い眉毛、太い眉毛、柔らかそうな眉毛、硬そうな眉毛、丸い眉毛、げじげじ眉毛、アーチ状の眉毛。みんな楽しそうに騒いでいる。ああ、そうだった。今日まで、眉毛たちが休暇を取っていたんだっけ。いつになく長い休暇だったから、目の上がスースーするのにもいつの間にか慣れてしまっていた。おかえり、眉毛たち。明日からはまた、思い切り困ったり、驚いたりするつもりだから、よろしく。