超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

相乗り

 前を走っていた車のマフラーから、何か黒い綱のようなものが飛び出していた。よく見るとそれは三つ編みの髪の毛だった。さっきまで、あんなものなかったはずだけどな。おや、おでこが現れた、と思ったら、眉、目、鼻、口、首、肩、胸、おなか、太もも、と次々ところてんのように出てきて、最後につま先が現れたところで、前の車が赤信号で止まった。マフラーから現れた女の子は、そのまま立ち上がると、歩道の向こうにあった墓地へとすたすた歩いていった。かすかに線香の匂いが漂ってきた。前の車の後部座席では、母親らしき人が、突然泣き出した赤ん坊を必死であやしていた。