超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

メロン

 廃墟になっている病院に肝試しに行ったら、天井を逆さまに歩いていた看護婦さんに捕まって、緑色の液体が入った注射を打たれた。気がつくとぼくはメロンになっていて、ある病室のベッド横に置かれた果物かごの中に放り込まれていた。今はかごの中でじっとしながら、ベッドの主が現れるのを待つ日々だ。最初の頃は、一緒に肝試しに来た仲間は今頃どうしているだろう、などと考えて寂しかったものだが、自分はメロンになってしまったんだと割り切ると、それはそれで悪くないものだ。早く食べられてしまいたいとさえ思う。問題はここが廃墟だということなのだが。