超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

石の城

 夜中、喉が渇いたので台所に行くと、暗い天井の近くに、バナナが一本浮いていた。熟すのを待とうと放っておいたバナナが、三日月の真似をしているのだった。ひざまずいて祈る真似をしてみた。バナナが頭上で照れるのがわかった。水を飲み台所を去る時、振り返るとバナナがおやすみと左右に揺れていた。おやすみと手を振りかえして寝床に戻った。その夜は囚われの姫を石の城から救い出す夢を見た。三日月の似合う城だった。