超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

ヒマワリ

 スマホの待受画面をゴッホのヒマワリに設定した。誰に見せるわけでもないけど、何かかっこつけたかったのだ。しかし、その日から、外を出歩くたびに、数本のヒマワリに後を尾けられるようになってしまった。この辺に、ヒマワリが咲いている場所なんてないのに。このヒマワリたち、何をしてくるわけでもなさそうだが、しかし、尾行の目的がわからないから、いまさらスマホの待受を他の画像に変えるのも何となく怖い。明るい画面のスマホを持ち歩きながら、ヒマワリの尾行に怯える日々。せめて写楽とかにすればよかった。尾けられても言葉は通じそうだから。いや、でもあのデカい顔で見つめられたらそれはそれで恐ろしい。じゃあモナリザ?ダメだ、イタリア語なんてわからない。ああ、もう。誰に見せるわけでもないのに、かっこつけなければよかった。