超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

足跡

 鋭い爪と水掻きのある足跡が、海の中から砂浜を突っ切り、馴染みの寿司屋の裏口へと続いていた。店先には「仕込み中」の札。耳をすませばかすかに大将とおかみさんの声。「よく来たねぇ」とか「偉いもんだ」とか、そんな言葉が途切れ途切れに聞こえた。その夜、店に立ち寄ると、大将が快活な笑顔で「珍しいネタが入りましたよ」と言う、のでとりあえずお造りにしてもらうことにした。ビールに合うかな。