超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

リモコン

 庭の物置を整理していると、かびくさい箱に入ったよくわからないリモコンを見つけた、何気なく「入」のボタンを押すと、リモコンはピッと鳴った、が、家の方で何かが動いた様子はなかった、その日の夕方、玄関先に知らない爺さんが二人やってきて、「××君、遊びに来たよう」としゃがれた声で叫び始めた、××とは、こないだ死んだ祖父の名前だ、もしかして、さっきのリモコンか、リモコンを再び物置から取り出し「切」のボタンを押すと、玄関先の爺さん二人はハッとした顔をしたあと、それはやがて苦笑いに変わり、リモコンを一瞥してきびすを返し、とぼとぼとどこかへ帰っていった、そういえば祖父は毎年、年賀状が届くのをとても楽しみにしていたが、このリモコンの存在を知ってしまった今、あの大量に届いていた年賀状のうち、何枚が「本物」だったのだろう、と思った、リモコンは祖父の墓に供えることにした。