超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

やる気

 端から端へファスナーのついた大きな雲が、肘をつき片膝を立てて寝転がるおじさんの形で、ゆっくり空を流れていく、微動だにせず、やる気なく、流れていく、流れていった、風に流されて、いってしまった、退屈な田舎町の空だからと思って油断していたのかもしれない、が、せっかく中に誰かいるんなら、もうちょっと楽しませてほしいと思った、退屈なんだ田舎町、雲の形くらい楽しませてくれ、ああ、もう山の向こうに見えなくなってしまった、山を越えたらすぐ都会だ、そろそろ雲も起き出して何か面白い形になる準備をしているだろう、そして都会では誰かがそれを見つけて写真に撮って、ネットに上げて盛り上がるんだきっと、退屈なんだ田舎町、雲だってやる気出してくれたっていいじゃないか。