超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

よこどり

 ベッドで眠りかけていた私のもとに飼い犬がやってきて、床にごろんと仰向けになり、「撫でて」とでも言いたげな様子できゅーんと鳴いた。仕方ない、撫でながら寝よう。そう思い、目をつむったまま床の方へ手を伸ばし、飼い犬の腹を撫で回してやった。何だかいつもよりちょっと湿っている気がした。ところが、しばらくそうしていたら、飼い犬が、ぶふっ、ふごっ、みたいな、とにかくそういう不満そうな声を出したので、うっすら目を開けると、飼い犬がベッドを離れ、部屋から出ていく後姿が見えた。しかし、私の片手は湿った毛に包まれている。私は何を撫でているのだろう。見る勇気が出ない。薄目を開けたまま不自然な姿勢で固まっていると、「撫でろよ」とでも言いたげな様子で、何かが私の指をぎゅっと締めた。