超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

同じレンジ

 新しいゲームを買ってもらったので、休日の朝から、近所の××君の家に行った。インターフォンを鳴らすと、××君のお母さんが出てきた。「××君お願いします」「すぐに用意するから待っててね」通された居間でジュースを飲んでいると、電子レンジのあたため終了の音がピーッと鳴って、丸々肥った××君が現れた。「超デブじゃん」「母ちゃんが失敗した」そんなことを言いつつ、新しいゲームを早速二人で対戦プレイしたが、さすが××君、まったく歯が立たない。やっと××君に勝てたのは、夕方過ぎ、彼がすっかり萎んでコントローラーをまともに持てなくなった後だった。でもこれは正当な勝ちとは言えないだろう。「またやろうな」そう声をかけると、××君は足下から「ふぉぅ」と気の抜けた返事をした。帰り際、××君のお母さんがあったかい肉まんを持たせてくれた。××君に使ったのと同じレンジであたためたらしく、ちょっとだけ××君のにおいがするのが気になった。