超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

影、ふとん

 夕方、ベランダに干していた布団をとりこもうとしたとき、布団に、小さな女の子の影がしがみついているのを見つけた。私が住んでいる家は、すぐそばに墓地があるので、時々こういうことが起きるのだ。干したての布団の魅力に、吸い寄せられてくるのかもしれない、冷たい土の中から。
 布団の中に、影を見つけたときは、布団をベランダに残したまま、夜になるまで放っておくことにしている。夕ご飯を食べ、お風呂から上がる頃になれば、辺りは夜になっていて、影もどこかに消えている。布団を取り込み、床に敷き、大の字に倒れこむと、すっかり冷たくなっている布団から、ふっと、ハンドクリームやお菓子の匂いが鼻先をかすめることがあって、そういうときは、無性にさびしい気持ちになる。