超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

蛸、あじはしらない

 まいにち、ゆうぐれどきに、みせのまどのまえをとおるおんなのこが、てをふっていたあいては、おれではなく、いけすのなかの蛸だった。蛸のやろう、さいきん、ゆうぐれどきにやたらあかいから、よくしらべたら、そういうことだった。あるよる、蛸のにぎりをちゅうもんしたきゃくがいたので、れいの蛸をひきずりだして、さばいて、くわせた。あじはしらないが、きっとうまかったんだろう。つぎのひから、おんなのこはみせのまえをとおらない。