超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

、と。

 庭の柿の木から実を一つもぎり、切り分けていると、本来なら種のあるべき場所に、種ではなく、丸いドーナツみたいなものが埋めこまれていた。五分くらい考えて、そのドーナツみたいなものが、句点であることに気がついた。するとどうやら、今まで種だと思っていたのは、読点だったらしい。ということは、今年はもうこの実でおしまいってことなのか?窓を開け、柿の木に向かって、その疑問を声に出してぶつけてみると、柿の木がそうだと言わんばかりに幹を大きく揺らした。それならば仕方ない。去り行く秋を名残惜しみつつ、来年もよろしく、と声をかけると、それに応えるように、柿の木がさらさらと葉擦れの音を立てた。

 それにしても……と、今年最後の柿の実をゆっくり味わいながら考える。ずいぶん理屈っぽい柿の木だ。……理屈っぽい人間を養分に育つと、やっぱり、理屈っぽい木に育つんだなぁ。ま、別にいいけど。