超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

授与

 右手にナイフを握りしめた男が
 ニコニコ笑いながら
 人ごみの真ん中で
 俺にそのナイフを振り下ろそうとしている

 が 道行く人も警官も何も言わないのは
 その男の左手に
 俺の耳をかたどったトロフィーが
 抱えられているからなのだろう

 夕暮れの街の路上で
 賞品の授与が
 静かに始まる

 ぴかぴかに光るトロフィーに
 流れる雲が
 いびつに映っている