超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

シャララ

 友人から犬をもらった。「この子、魔法の犬なんだよ」とのことだった。魔法の犬か。魔法の犬ねえ。女の子だったので「オクサマ」と名付けて飼い始めた。が、このオクサマ、ただただ素直でかわいい雑種犬で、魔法の犬っぽいことをほとんどしてくれない。ふくろうに変身するとか、口から炎を吹くとか、人の言葉を話すとか。唯一魔法の犬っぽいところは、うれしい時にしっぽをふると、しっぽの先からシャラララン、という音とともに光の粒が飛び出すところだ。古いアニメなんかで魔法使いのおばあさんが杖をふるたびに出てくるあの音と光だ。飯をやる、シャラララン。腹をなでる、シャラララン。広い原っぱへ連れていく、シャラララララ……。これで魔法の犬と呼んでいいものかどうか怪しいが、オクサマは素知らぬ顔で、今日もしっぽをふりふり、やかましい音を立てながら、茹でササミを待っている。ちなみに友人の家にいるオクサマのきょうだいは、月がよく出ている晩には、地面から1センチくらい浮くらしい。