超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

友情

 この前の健康診断でわかったことなのだが、俺の背骨は本の背表紙になっているらしい。医者に見せられたレントゲン写真には、背骨に「友情 武者小路実篤」と刻まれていた。「何か心当たりは?」と医者に訊かれたが、さっぱり思い当たらない。「友情」なんて読んだことないし、武者小路ナントカって、戦国武将か何かだと思っていたくらいだ。健康上何か問題が起こるようなことでもないらしいので、とりあえず放っておくことにしたのだが、たまに本屋に行った時など、文庫本の棚の「む」のスペースに余裕があったりすると、なんか、少しうずうずする。だからなんだと言われればそれまでだが。