超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

侵略

 昼寝をしていた。

 夢をみた。

 緑色の手と、握手する夢。

 目覚めると、体が金縛りみたいに、動かせなかった。目だけ動かして、周りを見回すと、私の胸に、小さな旗が刺さっているのが見えた。

 お子様ランチみたい。だと思った。

 へそからは眩しい光が漏れていた。あたたかい家庭の光。という感じだった。

 と思っていたら、やがて鼻の穴から、シチューの匂いの湯気がふきだしてきた。

 どうやら私は、侵略されてしまったらしい。緑色の何かに、昼寝の夢を通じて。

 辺りはいつの間にか、夕暮れ時。窓の向こうにいつもの生活を送る人々の影が通り過ぎる。

 きいたこともないメロディの歌が、あばら骨を静かに振動させるのを感じながら、私はそれをいつまでも眺めていた。

 という、とてもあっけない侵略の話でした。これでおわりです。