超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

薬指

 女の指が一本、尺取虫みたいに体を曲げ曲げ、道路を横切っていく。教会の方からやってきたらしい。ので、教会へ行く。教会では結婚式の準備が行われていた。なるほど。あれは薬指だな。直感する。薬指のところへ戻る。女の薬指は、すでに道路を渡り切り、海やごみ溜めのある、町の南の方へと去っていくところだった。薬指、自ら逃げたのか、女が逃がしたのか。教会へ戻る。と、すでに結婚式が始まっていた。が、まだ騒ぎにはなっていなかった。拍子抜けして商店街へ。ラーメン屋で餃子とビールを注文する。テレビがどうでもいいニュースばかり流している。薬指、自ら逃げたのか、女が逃がしたのか、どこへ逃げるのか。