超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

首長竜

 夜中、トイレに起きると、リビングに柱が一本増えていた。近づいてよく見るとそれはこの間博物館で見た首長竜の首だった。
「ちょっとお邪魔してますよ」
 頭上から声がしたので顔を上げると、天井から、首長竜の下顎がはみ出してパクパクしていた。
「おたくの坊ちゃんの夢に呼ばれたので」
 二階には息子の部屋がある。
「ああ、それで……」
「朝までには帰るつもりですので、ご心配なく」
「はあ、それはどうも、お手数かけます」
「いえ。では」
 そう言い残して首長竜は大きな体をゆらゆら揺すりながら、ゆっくり二階へと消えていった。割と甲高い声できびきびした喋り方をするのが、イメージとちょっと違っていた。
 それからトイレに入ったのだが、おしっこはあまり出なかった。首長竜との因果関係はわからない。