超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

 月には一匹の老いた猫がいる。
 猫には蚤がついている。
 猫だけがいる。
 飼う人はいない。
 飼う人がいないから、洗っていない。
 洗っていないから、猫は痒い。
 痒いから、掻く。
 すると猫から蚤が飛び出す。
 その蚤を地球から見たのが、流れ星の正体だ。
 だから、流れ星に祈っても効果は期待できない。

 しかし、猫は、願いを叶える気満々でいる。
 昔、月にやってきた人間に、地球にはそういう習慣があると教えられたのだ。
 はりきっているのだ。

 だから流れ星に祈ってやると、月にいる猫が喜ぶ。
 それだけのことだ。