超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

ブレーカー

 今夜は満月だった。そのことを忘れていた。電子レンジを使っていたら、ブレーカーが落ちて、夜空が真っ暗になった。今夜はうちが担当する日だったのだ。四方八方から、鳥獣や虫の不安げな鳴き声が聞こえてくる。
 慌てて電子レンジのコンセントを抜き、ブレーカーを上げる。じじっ、と音がして満月が輝き、いつもの夜空に戻ると、辺りには生き物たちのほっとしたような声が響いた。
 生ぬるいままのグラタンを食べながら、来月の電気代に思いを馳せた。