雨も降っていないのにマンションの廊下が雨漏りしていたので、管理人に伝えると、管理人は管理人室のロッカーから錆びた鉗子とメスみたいなものを取り出し、ふっと大きく息を吐いた。
「なんですかそれ」
「や」
管理人は暗い、強張った顔で、それを握りしめたまま屋上へ行き、しばらくして、やっぱり暗い顔で戻ってきた。
気づけば雨漏りはぴたりと止まっていた。
「ありがとうございます」
「や」
ふと見ると、管理人の禿げ頭に、小さな切り傷がついていた。
「お仕事大変ですね」
「うん」
「ご苦労様でした」
「や」