超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

 幼い頃、絵本の猿にえぐり取られた右の目玉が、二十年経った今、隣町の図書館で見つかったと連絡が来た。あの絵本は捨てたものだと思っていたので、とてもびっくりした。
 早速図書館に行き、目玉を返してもらうついでに、
「あの猿はどうしました」
 と司書に尋ねると、司書は
「誰も読まなくなったので死にました」
 と答えた。
 二十年ぶりに戻ってきた目玉には、なるほど、猿の卑屈な笑顔がうっすらと焼き付いていた。