2018-09-30 細胞 マリコからきいた話 煙草に火を点けようとしたが、ライターから現れたのは、炎のように赤い一匹の金魚だった。 金魚はからかうように俺の鼻先を尾びれでさっと撫で、こともなげに空へ昇っていった。 見上げると、頭上遙か高く、陽の光がまるで何かの細胞のような、ぶよぶよとした塊になって、いくつも揺らめいていた。 光の中へ吸い込まれていく金魚のシルエットを見つめながら、この池で溺れ死んだことをふいに思い出した。