超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

林檎

 親戚から林檎が送られてきた。一つ磨いて、母の仏壇にお供えした。
 その翌朝、幼稚園児の娘が仏壇の前に座って、何かそわそわしていた。
「何してんの?」
 と訊くと、
「寝てたら、おばあちゃんが、××ちゃんが起きたら、これ、食べていいって、言ってたから、食べていい?」
 と答え、仏壇を指さした。
 見ると、昨日の林檎が、いつの間にかウサギの形に切られていた。母がやったらしい。母にお供えしたんだから、母が味わえばいいのに。しかも、わざわざ娘が喜ぶウサギさんにしたのか。何というか、母らしくて笑ってしまった。
 次はハンバーグの材料でもお供えしておこう。