2018-09-20 沈める人 トモコからきいた話 夕暮れの空に、街に、耳に、たくあんをかじるような音が、ぽりぽり響いている。 その音が聞こえるたびに、丸い夕日がちょっとずつ、地平線の下へ、ちょっとずつ、沈んでいく。 ぽり、沈む、 ぽり、沈む。 ぽり、沈む、 ぽり、ぽり、沈む。 祖母が言うには、昔、夕日は音もなく、すーっと沈んでいったものなんだそうだが、最近ではもう、沈める人も、だいぶトシらしい。 ……ぽりっ。 ようやく訪れた夜の空に、震える月が昇り始めた。