台所に面した窓の向こうを、カタツムリのようなものがのろのろ這っていた。
よく見るとそれはカタツムリではなく、風呂敷包みを背負ったナメクジだった。
家出なのか、
放浪なのか、
泥棒なのか。
あれこれ詮索しながら眺めていたらふいに目が合ったので、からかうつもりで手元にあった塩の小瓶を構えると、ナメクジが、
「もういっそ殺してくれ」
みたいな顔で、寂しく笑った。
思いもよらなかった反応に戸惑っているうちに、ナメクジはいつの間にか姿を消していた。
かんかん照りの陽の光が、アスファルトに陽炎を作っていた。