超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

明日

 ある日突然姿を消した友人の部屋から、ゴミ箱一杯の、「明日」と印刷されたレシートが見つかった。
 レシートの日付は、友人がいなくなった日の二日前までで途絶えていた。
 ゴミ箱からレシートを一枚拾い上げ、そこに載っていた電話番号に掛けてみた。
 数回のコールの後、誰かが電話に出たが、緩い息遣いが聞こえてくるだけで何も言わない。
 とりあえず友人がいなくなったことを伝え、何か知らないかと尋ねた瞬間、突然頭の奥でカチッ、と何かが動いて、

 気が付くと俺は携帯を握りしめたまま、知らない部屋の真ん中で空っぽのゴミ箱を覗き込んでいた。
 どこだここは。何をしてるんだ俺は。
 慌てて部屋を飛び出し、周りを見渡すと、やはりそこは知らないマンションの廊下だった。
 何が何だかわからない。酔っ払って、偶然見つけた空き部屋に入って眠ってしまったのだろうか。だが、酒を呑んでいた覚えはない。
 何とか記憶を辿ってみたが、ほとんど何も思い出せない。唯一ぼんやりと覚えているのは、あの部屋の中で、何かに対して「意外と安いんだな」という感想を抱いた、という断片的な記憶だけだが、それが何を意味するのかもわからなかった。