超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

雨雲

 会社の昼休み、昼食を買いにスーパーに行くと、
 夏も終わりに近づいているためか、細切れにされた入道雲が売られていた。
 せっかくなので他の物と一緒に一つ買い、近くの公園へ向かった。

 しかし、いつものベンチに座り、ビニール袋から雲を取り出してみると、
 白かったはずの雲が、紫がかった雨雲に変わっていた。
 原因はすぐにわかった。
 一緒に袋に詰めた弁当の汁が漏れて、染みてしまったらしい。

 頭上に浮かべて日除けにしながら昼食をとろうと思っていたのに、がっかりだ。
 そこら辺に捨てるわけにもいかないので、公園の池に逃がすことにした。
 雨雲はすぐに水に溶けて見えなくなった。

 近くをボートで通りかかったカップルが「何か漬け物のにおいするね」と言っていた。