超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

銀紙

 ガムを噛んでいたら、口の中から頭へ伝わる、くちゃくちゃという音が、味がなくなるにつれて、ギシギシという嫌な音に変わってきた。まるで古い学校のかびた廊下を誰かがゆっくり歩いてくるのを聞いているような、不安な音だった。そのうちに、その音が何だか少しずつ大きくなってくるような気がしてきた。まったく嫌な気持ちになって、包み紙を開いてそこへガムを吐き出し、ふと顔を上げると、すぐ傍に、さっきの廊下を歩いてきたらしい年老いた男が、悲しそうな顔で突っ立っていた。