超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

第二幕

 昨夜の残りのカレーを食べようと鍋の蓋を開けると、鍋の中から青白い顔の女が恨めし気に私をじっと睨みつけていた。
 時計を見ると午後一時半。
 お昼時、カレー鍋、青白い女。
 たぶん何か間違ったのだろうと思い、気づかなかったふりをして蓋を閉めた。

 その日の夜、誰かの泣き声が聞こえた気がして、ふと目が覚めた。
 寝汗をかいていたので洗面所に行き、顔を洗って目を上げると、目の前の鏡の中から青白い顔の女が恨めし気に私をじっと睨みつけていた。
 時計を見ると午前二時。
 丑三つ時、鏡の中、青白い女。
 安心して悲鳴を上げた。女もほっとしているようだった。