超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

はたはた

 動物園の裏の道を通ると、飼育員らしきお姉さんが、物干し紐に洗濯物を干していた。形も大きさもバラバラな、茶色い布だった。ハンカチでも雑巾でもなさそうだ。よく見ると、キリンの茶色い部分だった。ということは、今日はキリンの檻はお休みか。つるんとしたキリンが動物園のどこかで羽を伸ばしているに違いない。ふいに強い風が吹いた。紐が揺れて、キリンの茶色い部分がはたはたはためいた。中古車販売店の万国旗みたいだった。