超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

プルタブ

 この間、床屋で髪を切ってもらっている時、頭のてっぺんにプルタブが付いていることに初めて気がついた。
 この床屋には何度も来ているが、そんなことを指摘されたのは初めてだ。床屋の親爺も首をかしげている。最近になって付いたものらしい。先日、長年勤めていた会社を辞めたことと何か関係しているのかもしれない。

 このプルタブを、いいことがあった時に開ければいいのか、嫌なことがあった時に開ければいいのか。
 人に会うたびにそれを相談しているが、答えはまだ出ない。

 妻は
「開けなければいいじゃない」
 と言う。

 いや、でも。
 それは、まあ、
 うーん。