超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

うずしお

「あそこに浮かんでるのは島じゃないよ」
 地元の漁師は言った。
「あれは足の裏だよ」
 足の裏?
「海の静かな晩に、もう一度ここに来てごらん。あれが海から飛び出して、夜空で何かを踏んでいるのが見えるから」
 何を踏んでるんですか?
「それがわから、ははっ、わからないから、俺たちはあれに近づかないんだよ」