庭で死んでいた黒い鳥の、大きく開けられたくちばしの中を何気なく覗くと、粘ついた暗がりの中に人間の目があって、こちらをじっと見つめていた。
目は何かを訴えるように二度三度まばたきをして、涙をぽろりとこぼした。
ああ、これは妹の目だ。
去年、飛行機事故で亡くなった妹の目だ。
間違いない、そうだ、妹の目だ。
現場からただ一人遺体が見つからなかった妹の目だ。
私がそのことに気づいたその瞬間、くちばしの奥の目が笑ったように見えた。
やがて頭上から妙な音が聞こえてきた。見上げると、無数の黒い鳥の死骸が塊になって、まっすぐ私に向かって落ちてくるところだった。