超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

定期報告

 毎年この時期に漁に出ると、引き上げた網の中に、魚に混じって一台の古びたそろばんが引っかかる。
 玉の並びは毎年微妙に違うが、古参の漁師の話では、その前年に海で亡くなった人の数とぴったり一致しているらしい。
 そろばんを見つけてしまったら、そのまま海に戻す決まりになっている。
 一度、ある漁師が気味悪がって踏み壊したことがあるらしいが、次の日に「一」と示されたそろばんとともに水死体になって発見されたそうだ。