超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

猫とおばあさん

 隣の家に住んでいるおばあさんが、今日もニコニコ笑いながら、庭に集まった野良猫たちにエサを与えている。
 ずいぶん前に、こういうのはトラブルの元になりますから気をつけた方がいいですよ、とさりげなく注意したことがあったのだが、怒鳴られて追い返されてしまった。
 余計なことせずに役所にでも相談してきなよ、と夫は言うのだが、私がおばあさんに注意してほしいのは、役所の管轄の問題ではない。
 おばあさんは、いつになったら気づくのだろう。
 猫たちの胴と頭の隙間に、人間の手首が見え隠れしていることに。